二人展「ウツツのはえる庭」の会期中に、自分が影響を受けた本を会場に置いていました。
その5冊の本を紹介いたします。
①「にんじん」 ジュール・ルナール 著
ひねくれた少年“にんじん”とその意地悪な母とのいびつな関係を描いた作品ですが、その行間から詩情が溢れます。
ルナールの描写はあくまでも冷静で写実的なのですが、その文章からは、小屋裏の地面に顔を寄せる時のじんわりと冷えた空気の感触であったり、小さな生き物を殺した罪悪感、親戚のおじさんと眠る布団の息苦しさなど、子供の頃に自分も経験したであろう感覚が鮮烈に蘇ってきます。
短い挿話が連なった全編に渡って、子供の抱える悲しさと美しい自然とが徹底的に対比されてゆきます。
人間を突き放しつつ、しかしユーモラスに運ばれる筆致にとても魅力を感じます。
2025.06.10