「中国奇想小説集」(伊波律子 編訳) から、
清代の「聊斎志異」に収録された「黄英」という短編小説が興味深かった。
菊マニアの主人公 子才が旅先で買った菊を持ち帰る途中、美しい兄妹に出会う。子才は彼らと菊を育てる話で盛り上がり、自分の家に住まわせることにした。兄妹は子才の家の庭の菊を育てて、見事に増やしていく。兄妹は菊で商売を始めどんどん勝手に栽培を拡大し、子才の家を増築する。兄の陶が他国に菊を売りにいく間に子才は妹の黄英と結婚し、その後陶も家に連れ戻して3人仲良く暮らす。ある日酒好きの主人公の友人が陶にたんまり飲ませたところ、倒れて一輪の菊になってしまった。兄妹は菊の精だったのだ。翌日再び人間の姿に戻ったが、すっかり酒にだらしなくなった陶は再び飲みすぎて菊になり、子才はそれを抜き取ってしまったため陶は死んでしまう。子才は深く後悔し、黄英は萎れた菊となった兄を咲かせ、「酔陶」と名付けた。。。
菊の栽培と、それによって得た富で家を増築したり。
できた菊を全て売りに行き、また得た苗でさらに畑が広がっていったり。
結婚に伴って、広い邸宅内の人や家財が行き来したり。
二つの屋敷を一つに繋いでリフォームしたり、庭に茅屋を建ててひきこもったり。
人や物の動き・移り変わりの描写が菊の栽培と併せて不思議に淡々と綴られていく。
この小説全体が、どこか植物や生命の育っていくプロセスを模式的に描いたもののように感じる。
様々な養分が体を巡ったり、いろいろな組織が体の各所で刻々と形を変えていく様を彷彿させる。
作者の蒲松齢はそんなことは意図していないのだろうが、様々な書物や口伝えの奇譚を採取する中で生まれた、物語が自分で成長していくような、奇妙な小説だと感じた。
2025.11.28