「私はこの宇宙が擁する恐ろしいものすべてを見てしまったから、春の空も、夏の花も、この先ずっと私にとっては毒とならざるを得ない。」(『クトゥルーの呼び声』より)
今更何をと思われるかもしれませんが、ラヴクラフトは面白いですね。
ミシェル・ウェルベックの『H・P・ラヴクラフト』 も読みました。
いわずと知れた「クトゥルー神話」の生みの親である怪奇幻想小説作家ラヴクラフトの評伝です。
化学的・具体的細部を積み重ねることで狂気の世界に接近していく、といった彼の作品の特徴などが挙げられていました。
「凄まじい、名状し難い」などの直接的な形容詞を乱発してしまう、ラヴクラフトの少し不器用な文章には共感を覚えます。
作中に出てくる建築や都市について、いかにそこが・それがヤバいのかを微細な描写を重ねて畳み掛けてくるラヴクラフトの想像力と筆力に強く惹かれます。
最終章ではラヴクラフトの人生における挫折が、どのように彼の円熟期の名作の数々を生み出したかについて語られています。
ニューヨークでの挫折ののち、彼が親類や友人に送った書簡に綴られた異人種への剥き出しの憎悪には慄然とさせられるものがありました。
(この辺りは評伝の構成としてキレイに出来すぎているようにも思えましたが。)
憎悪を作品の確かな力に変えてしまえることの恐ろしさを感じました。
2025.11.12